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• 「大陸会社便覧」のカタログはこちらです。（pdf/2,741KB）

本書の内容

本社所在地、設立年月日、事業内容、資本金、 株式、株主数、役員、大株主、業績等を記載。 資本金100万円以上の大企業を網羅した大陸版『会社四季報』（東洋経済新報社刊）。

『大陸会社便覧』の復刻にあたって　　　　金丸裕一（財団法人東洋文庫研究員・立命館大学教授）

　『大陸会社便覧』とは、支局開設からまもない東洋経済新報社京城支局が、戦時下の一九四一（昭和十六）年から一九四三（昭和十八）年までの三回、「朝鮮」、「満洲」、「支那」で活動する大手企業の企業成績を年次ごとに刊行した書籍である。既に『会社四季報』による類似した実績を持っている東洋経済新報社であった故、その「外地版」と考えて良い史料であると言えるだろう。
　本書の内容を具体的に説明する昭和十七年版の「はしがき」には、「本社及活動本拠を鮮満支現地に置く株式会社のうち主として資本金百万円以上の会社」の「一々の性格と活動現況を網羅的に編集したもの」とある。そして「新設、異動其他の各社新事実を補充追加して、毎年一回定期的に刊行する」ことを目的としていたことが説明される。
　たとえば昭和十七年版では、収録企業は九四〇社に上る。これらを三地域に分け、「朝鮮之部」「満洲之部」は、銀行、保険等と業種別に記載し、「支那之部」は、「北支那」「蒙疆」「中支那」と地域ごと記載している。データは、すべて日本円で表示され、各企業の本社所在地、資本金、株式、株主数、役員名、資産負債、収支計算等々が掲げられている。日本国内在住の資本家の中でも、これらの企業に投資した者は多く、経営状況の行方に大きな関心が抱かれたからであろう。現在、マイクロフイルムなどによって、いくつかの会社は「営業報告書」や「株主名簿」の閲覧も可能ではあるが、『大陸会社便覧』というコンパクトな素材自体が、従来ほとんど用いられてこなかった事実に対して、監修者は些か不思議な気もしていた。
　前記の通り本書は、日系企業の「外地」における企業活動の最新動向を知るための情報誌であった。このことは巻末附録として、この三地域に新設された国策会社の「関係会社一覧表」を附していることからも類推され得る。
　本書は、近年、急速に進む戦前期日本帝国圏内における社会経済史研究の細部を埋める資料として興味深いものがある。そして同書に列挙される各企業を横断的に点検し、他の基本資料と照合することによって、戦時下の日系企業の植民地における活動の「点」を、「線」としてつなげ、重層化することで、これら活動を「面」として把握することを助ける、極めて有用な資料といえるだろう。
　惜しむらくは、刊行回数がわずか三回で終了、本書のみで時系列分析を実施するには不十分な「まとまり」でしかない。しかしながら、とりわけ「中国」や「蒙疆」を対象とした類似史料が不足している現状を鑑みると、視点と工夫次第で、未知を既知に転じさせることが大いに期待できるデータ群であると評価されるだろう。さらに、各年度版によって収録される企業に出入りがあるため、読者諸賢への便宜を図るために、収録企業の年度別掲載ページ一覧を解題の末尾に整理した。いずれにせよ、積極的活用者の出現が待望される情報誌なのである。

【本書の特色】

●昭和16・17・18年版、東洋経済新報社京城支局及び東京の本社刊。
●『会社四季報』（東洋経済新報社刊）の日本帝国圏版（朝鮮・満洲・支那の3部に分かれる）。
●資本金100万円以上の大企業を網羅、昭和16年633社、昭和17年940社。昭和18年706社。
●本社所在地、設立年月日、事業内容、資本金、株式、株主数、役員、大株主、業績等の詳細を掲載。
●索引があるため、当時の大陸にあった企業を簡単に調べることが出来、企業名事典としても有用。
●今日まで高い評価を得てきた『会社四季報』の姉妹篇ともいうべき、信頼度の高い好文献。
●戦時下発行の小型本を閲覧しやすいサイズに拡大。
●収録企業の年度別掲載ページ一覧を付録として付した。