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シリーズ・近代アジアの都市と日本
近代中国都市案内集成 上海編 全12巻
揃定価304,700円(揃本体277,000円)
ISBN 978-4-8433-3534-5 C3325
A5判/上製/クロス装/函入
刊行年月 2012年01月
関連情報
本書の内容
近代日本人の「上海イメージ」の探求と日中関係史研究のための基礎的文献集。
日本では早くから上海案内記が刊行されましたが、特に日本人移住者が増えだした1910年代以降、「上海ガイド」というべき上海に関する具体的な案内記が刊行されてきました。今回、これらを『近代中国都市案内集成 上海編』と題して復刻刊行致します。当時の上海の姿を立体的に浮き彫りにし、かつまた近代日本人の「上海イメージ」を探る資料として、また、近代日本史・日中関係史研究、そして文学研究にも寄与することを願ってやみません。
監修にあたって 神奈川大学教授 孫安石
このたび、戦前上海を訪れる多くの日本人が手にした一連の上海ガイド・ブックが、ゆまに書房から『近代中国都市案内集成−上海編』として復刻されることとなった。
中国近代史のなかで上海ほど特異な発展を成し遂げた街があるだろうか。上海は様々な顔をもつ。租界に代表される「植民都市」であり、中国共産党が成立した「革命都市」であり、中国人・欧米人・日本人・ロシア人などが同居する「国際都市」でもあった。
この20世紀の前半の上海を、欧米人は「冒険家の楽園」、または「東洋のパリ」というあだ名で呼び、日本人は混沌と猥褻が共存する上海を、憧れと軽蔑が入り混じった複雑な感情を込めて「魔都」と呼んだ。
この「魔都」上海という日本人の上海イメージの形成に、谷崎潤一郎、芥川龍之介、村松梢風、金子光晴に至る大正時代の作家の系譜が一定の役割を果たしたことは、周知の通りであるが、この日本人の上海イメージの形成にもう一つの大きな影響を与えたのが、今回復刻される上海ガイド・ブックであるように思われる。
大正12(1923)年に長崎と上海を結ぶ定期航路が開かれるや、上海は日本人にとって最も身近な「西洋」になった。一時期、長崎では「下駄」を履いて上海へ、と言われる位、上海が身近な存在になったことは広く知られる通りである。
しかし、言葉が通じない異国の地「上海」での生活は容易ならざるものであった。初めて上海に到着する日本人であれば、まずは、人力車と荷車を雇い、大きな荷物を担ぎ、上海の旅館に投宿しながら下宿先を探さなければならなかった。いよいよ住居が決まれば、次は毎日の日常生活が待っている。「文路が銀座なら呉淞路は日本橋か、其の文路と呉淞路の交叉するところにマーケットがある。肉類、魚類、禽類野菜さては氷まで、ありとあらゆる日用食品」(『上海案内』第一版、42頁)を購入し、日々の生活に備えておく必要がある。その後、何とか上海の生活に慣れ、商売が順調に行き、成功が期待できる人であれば、花柳界の遊びの作法を覚えていかなければならない。
そこで求められたのが、上海での生活の作法を案内してくれる旅行ガイド・ブックであり、その代表的なものが『上海案内』(金風社、1913年、第1版〜1927年、第11版)であった。この『上海案内』は上海の歴史と名所案内は勿論、上海から中国の内地に向かう鉄道の時刻表と料金、上海に滞在する日本人居留民の職種と住所、電話番号をも網羅し、掲載している。また『上海案内』には、当時上海で商業活動に従事していた日本人の商業広告が大量に掲載されていたことも注目したい。
上海ガイド・ブックは、これから上海に在留する日本人にとっては各種の生活情報を手にいれる指南書であり、上海に在留した日本人にとっては自らが経験した「喜怒哀楽」を映し出す合わせ鏡でもあったと言い換えることができよう。
ところで、明治、大正、昭和期を通して数多く刊行された上海ガイド・ブックであるが、これを時期別に分けると、大きく三つの時期に分けられるように思われる。
最初は、1910年代に上海で金風社(出版社)を経営していた島津長次郎によって刊行された『上海案内』が中心になった生活ガイド・ブック時代。そして、1920年代に入り、上海と日本の経済関係が密接になる時期に上海日本商工会議所が編集に加わった『上海概覧』(1920年版、1923年版)、『上海要覧』(1939年)など経済情報を主に盛り込んだ貿易ガイド・ブックの時期。そして、1930年代に入り、満州事変、上海事変などで日中関係が悪化する中、日本国際観光局(現在のJTBの前身)が上海の戦跡めぐりを紹介するガイド・ブックの製作にかかわる時期である。
今回、ゆまに書房が復刻する『近代中国都市案内集成—上海編』は、上記の三つの時期に刊行された代表的な上海ガイド・ブックを集めており、我々は、本シリーズを通して戦前の日本人の上海イメージがどのように形成され、また変容していったのか、その一端を窺うことができよう。本シリーズが日本近代史、中国近代史、日中関係史はもちろん、文学、経済など幅広い分野の研究者によって活用されることを願ってやまない。
●『上海案内』に寄せられた推薦の序文
◆「世上所謂案内記なるもの多きも其実、名に背かざるもの蓋し稀也。島津君第八版『上海案内』を予に示して序文を求めらる。是を通覧するに体裁具備、資料斬新、克く案内記の名に添ふものと云ふべし。一言を寄せ同君の需に応ず」
(山崎馨一、上海総領事、『上海案内』第八版より)
◆「此の際上海のみならず広く支那諸般の事情を江湖に紹介する為め努力しつゝある金風社に於て茲に本書の増訂再刊を計画するは洵に有益の措置にして世人を裨益すること鮮少にあらざる可し一言以て序文となす」
(矢田七太郎、上海総領事、『上海案内』第十版より)
◆「島津君の『上海案内』は大正二年発行以来版を重ぬる事茲に十回、内容年と共に補修せられ面目回を追ふて又新、上海を知らんとするものゝ案内書として誠に好個のものと思考す。」
(横竹平太郎、上海駐在商務官『上海案内』第十版より)
●編者・島津長次郎について
(明治4・1871年~昭和23・1948年)
長治郎とも。兵庫県出身。明治33(1900)年末に上海に渡り、大正元年(1912年)に出版社・金風社を興し、『上海案内』『支那在留邦人々名録』等を刊行。俳人、歌人としても知られ、「四十起」と号し、芥川龍之介とも交流、上海の日本人文化界で活躍した。歌集に『人間を歌ふ四十起歌集』などがある。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第1回 全5巻 『上海案内』の世界 ―上海生活ガイド・ブックの誕生
刊行年月 2011年05月
揃定価143,000円
(揃本体130,000円)
ISBN978-4-8433-3535-2
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第1巻
刊行年月 2011年05月
定価38,500円
(本体35,000円)
ISBN978-4-8433-3538-3
上海案内 第1版/第7版
島津長治郎(四十起)(1913年1月/1917年3月金風社)
解説:日本人が見た上海イメージ —『上海案内』の世界
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第2巻
刊行年月 2011年05月
定価26,400円
(本体24,000円)
ISBN978-4-8433-3539-0
上海案内 第8版
島津長次郎(1919年12月・金風社)
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第3巻
刊行年月 2011年05月
定価22,000円
(本体20,000円)
ISBN978-4-8433-3540-6
上海案内 第9版
島津長次郎(1921年2月・金風社)
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第4巻
刊行年月 2011年05月
定価29,700円
(本体27,000円)
ISBN978-4-8433-3541-3
上海案内 第10版
島津長次郎(1924年5月・金風社)
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第5巻
刊行年月 2011年05月
定価26,400円
(本体24,000円)
ISBN978-4-8433-3542-0
上海案内 第11版
杉江房造(1927年5月・日本堂書店)
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第2回 全5巻 上海日本商工会議所と『上海概覧』の刊行
刊行年月 2011年09月
揃定価108,900円
(揃本体99,000円)
ISBN978-4-8433-3536-9
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第6巻
刊行年月 2011年09月
定価24,200円
(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-3543-7
上海
遠山景直(1907年・遠山景直)
「日本最初の上海専門ガイド」。資料に基づきながら自らの評価を下す「有趣」なるガイド。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第7巻
刊行年月 2011年09月
定価23,100円
(本体21,000円)
ISBN978-4-8433-3544-4
上海一覧 第4版
山崎九市(1928年・至誠堂新聞舗)
東亜同文書院出身で、上海実業界で活躍する編者の手になるハンドブック。典型的スタイルの中に編者の創見が光る。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第8巻
刊行年月 2011年09月
定価27,500円
(本体25,000円)
ISBN978-4-8433-3545-1
上海概覧/上海要覧 改訂版
上海日本商業会議所(1923年・上海日本商業会議所)/
杉村広蔵(1939年・上海日本商工会議所)
経済情報を主とするガイドブック。『上海要覧』改訂版は、上海事変後、激変した上海の変化に他のガイドブックが対応できなくなったために全面改訂したもの。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第9巻
刊行年月 2011年09月
定価23,100円
(本体21,000円)
ISBN978-4-8433-3546-8
上海内外商工案内
上海日本商工会議所(1935年・上海日本商工会議所)
第8巻所収『上海概覧』の緒言に、商工業者の詳細はこれを参照とあり、上海の商工業者を網羅する。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第10巻
刊行年月 2011年09月
定価11,000円
(本体10,000円)
ISBN978-4-8433-3547-5
上海事情
菊村菊一(1941年・博文館)
案内記としては読みやすい内容。上海のほかに周辺都市紹介も掲載。上海事変に関する記述も有り、「上海附近戦跡見学」等を併録。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第3回 全2巻 戦争と国際観光 ―「東洋観光会議」と上海ガイド・ブック
刊行年月 2012年01月
揃定価52,800円
(揃本体48,000円)
ISBN978-4-8433-3537-6
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第11巻
刊行年月 2012年01月
定価28,600円
(本体26,000円)
ISBN978-4-8433-3548-2
上海百話 訂正増補再版/上海風土記
池田桃川(1923年・日本堂)/
沢村幸夫(1931年・上海日報社)
洒脱な文章で著者の上海見聞をまとめた『上海百話』と当時の上海の文学的雰囲気をよく伝える『上海風土記』を収める。
シリーズ・近代アジアの都市と日本 近代中国都市案内集成 上海編 第12巻
刊行年月 2012年01月
定価24,200円
(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-3549-9
上海の文化
上海市政研究会(1944年・華中鉄道総裁室弘報室)
案内記ではないが、戦時下の上海を多角的に論述する貴重文献。